「富春館」

時は平成戊子 中秋。

豊後の国、戸次の里の帆足家本家「富春館」に、
招かれ、文人趣味煎茶を楽しみました。

土地の名士、淑女達が集う中秋の名月の会。
ジャズのライブ、美味しい食事、月にちなむお話、そして文人趣味煎茶席です。

江戸時代後期。
九州を代表する文人達を支え、集った家があります。
今で言うパトロン的な役割を果たした名家です。
帆足家本家です。

田能村竹田、直入、頼山陽、篠崎小竹、平野五岳・・・・・そして帆足杏雨。
挙げればきりがありません。
豊後の国から上方へ。
上方から豊後へ。
双方の交流の中心的役割を担っていました。



江戸時代後期を代表する文人、頼山陽先生が、
帆足家本家のために題した「富春館」の扁額。



床の間には帆足杏雨先生の山水画。
この家で、この部屋のために描かれた画がおよそ150年後も、
同じ場所に飾られる。



文人がひとり、川辺の閑居でのんびり遠望を楽しむ。



花は戸次村自生の秋の草花、女郎花、吾亦紅、段菊。
帆足家所有の唐物の青華花入れ。三多の絵が。



違い棚の上には田能村竹田先生の扁額。
「松石清品」と題された松と石の画に、竹田先生の賛。
落款は「右題 帆足君松石集 田憲 印」
ということは、画は帆足杏雨先生、賛が竹田先生なのか。

いずれにしても、ここで描かれたもの。



漆仕上げの違い棚には、大和から届けた瓢、鉈豆、そして糸瓜(へちま)。
「子孫萬代」と題す。
江戸時代より続く帆足家本家。今後も末永く続きますように・・・・



二間続きの座敷を一つにしての茶席。
下手の床にも、山水画と花鳥画の帆足杏雨先生筆の対幅。







ご用意いただいた白高麗(徳化窯)鼎香炉に線香を立てて。
香筒は持参の唐物で聖賢人刻。



日が沈むのも待ちきれず、雅客が訪れる。
香が香り、湯の注ぐ音が静かに聞こえ、ただ清風だけが流れる。
そう、竹田先生がおよそ150年前にここで過ごしていたことと同じように・・・・・



日も沈み、東の空に朧げに満月が・・・・
そうとも知らずに、茶に耽る。



遠く英国倫敦より客人が。
なにやら彫刻家と。。。早速筆を取りコラボレーション。
客人皆と大盛り上がり。
初めてであった芸術を愛する二人が、
まるで旧友のように称え合う。
帆足家の伝統は今も失われていない。



中秋の宴も終える頃には月は天頂に。
玄関で見送ってくれるのは
「博文」と落款のある扁額。
そう、伊藤博文氏もここで筆を取り、足跡を残している。

この週末は、大和から江戸へ鉄道で下り、その後空路豊後へ向かい、
中秋を楽しむ。

なんと慌しいことか。
舟で瀬戸内をのんびり旅をした竹田、帆足両先生は、さぞかし笑っていることでしょう。

150年の時空を越え、過ごした1日。
このような素敵な機会を与えていただいた
帆足家本家当主 帆足耕一郎様に心より深謝いたします。

頓首 敬白
                     
平成戊子 中秋後三日 於和州高山居松知菴主人 美風 九拝

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